ビジネスシーンでは「判断」と「決断」、この両方を使って業務を進めていきます。
ただ、のこ2つは似ているようで大きく異なるもので、その違いを理解することは日々の業務からキャリア形成、組織全体のパフォーマンスなど、幅広い場面で役立つことにつながります。
この記事では「判断」と「決断」の違いを整理しながら、上司と部下のそれぞれの立場からは何を意識するべきかを紹介します。
判断とは
判断とは「物事をを評価し、選択肢を整理、状況に対して意味づけを行う知的プロセス」となります。
要するに「行動(決断)をする前の状況を分析し、方向性の候補をつくること」です。
ここでは、判断とは何なのかをより具体的に紹介します。
情報を集める
判断をするためには、情報を集めることろから始まります。
事実関係の確認、状況や期限、リスクの把握、周囲との整合性の確認と過去の事例を調査など。
例えば、その情報が「事実なのか」「誰のどんな意図なのか」「どんな影響があるのか」といったことを確認する作業がこれに当たります。
情報を整理する
集めた情報をただ並べるだけでは判断材料としては不十分で、情報同士の関係を整理することで、使える形にする必要があります。
「何が問題で、何が問題では無いか」「どこに優先順位を置くべきか」「今すぐ考える必要があるのか」「影響はどのくらいか」など。
注意したいのは、情報は集めだすとキリがないということ。
期限を設けるなど、事前に決めておかなければ、延々と情報収集の罠にハマってしまうため注意が必要です。
選択肢を作る
判断の重要ポイントとなるのは「選択肢をどれだけ質高く揃えられるか」になります。
複数の選択(プラン)の、それぞれのメリットとデメリット、実現可能性や必要なリソースなど。
選ぶことはしない
決断と判断を混同しがちな点ではありますが、判断とは「選ぶこと」ではありません。
判断とは「何が可能か」「どの道(ルート)を選べるか」「どんな結果につながるか」を明確にすることです。
分かりやすい例だと、Google Mapのルート案内機能で目的地までの行き方の候補がいくつか表示されますが、その候補をあげることが「判断」で、どのルートを選択するのかが「決断」になります。
判断の良し悪しで決断の質が決まる
判断が甘いと、どれだけ優れた決断者でも誤った選択をする可能性が出てきます。
ただ、部下が制度の高い判断を行うことで、上司はより正確な判断を短時間で行うことができます。
決断とは
決断とは「複数の選択肢の中らか1つを選び、その結果に対し責任を持ち行動に移すこと」です。
判断を準備、決断は実行となります。
ここでは、決断とは何なのかを具体的に紹介します。
選択肢を1つに絞り込む
決断の最も大きな特徴は「選択肢の中から1つに絞る」ことです。
判断により、複数の選択肢を準備した中には「最も効果が高い案」「最もリスクが低い案」「制約の中でも現実的な案」など、どれを選ぶにしても複数案の中から1つに決めることが決断の核心とも言えます。
不確実性を受け入れ、リスクと向き合う
ビジネスでは不確実な事は必ずと言っていいほど存在します。
それでも前に進むためには「不確実性を抱えたまま決断し進む勇気」が必要です。
責任が伴う決断の本質
判断には責任は伴いませんが、決断には責任が伴います。
成功や失敗の責任、チームや顧客への影響など、特に上司の立場となる人の決断には組織としての結果を負う責任があります。
決めた後の行動も含め決断
決めること、それ自体が決断だと思われがちですが、実は「決めた後の行動」も含め決断なのです。
決めたゴールに向かってチームを動かす、必要なリソースを手配、スケジュールを作り準備をし、関係各所に連絡するなど。
決断とは「決めたことを達成できるよう、実行に移す」ことが重要です。
「断つこと」も決断
複数案の中から1つに決めることは、その他の案を捨てるということでもあります。
上司の立場となる人は選んだ道を進むだけではなく、選ばなかった道を切り捨てる覚悟も必要です。
迷いがあってはチーム全体に「このまま進めてもいいのだろうか」という不安が広がってしまう可能性があります。
成果は決断の早さ
ビジネスでは「早い決断」が成果に直結すると言われています。
市場は刻一刻と変化しており、チャンスは待ってはくれません。
また、迷っている間にもチームの士気が低下してしまう可能性が上がってしまうため、早い決断が求められています。
部下の立場から見る判断と決断
部下は決断の質を上げることが重要な役割となります。
最終的な決断権は上司にある場合が多く、そのため、求められるのは上司が決断しやすい「質の高い判断材料」を準備することが部下となる立場の人に求められることになります。
ただ、部下であっても決断を求められる場面は少なくありません。
普段の細かな業務判断、日々のタスクの優先順位付け、顧客への初動対応などは自身で決めるべきことです。
また、小さな決断を積み重ねることで、仕事のスピードが上がるだけでなく、上司からの信頼が高まり、管理職への昇進に必要な基礎が鍛えられるといった効果も期待できます。
上司の立場から見る判断と決断
上司に求められるのは「決断の質と早さ」です。
上司となる人にとって重要となるのは「決断力」といっても過言ではありません。
組織の方向性、人材の配置、案件の承認、戦略の決定など結果の責任が伴う決断が求められます。
ただ、責任が伴う決断を行うことを意識しすぎるあまり、情報が揃うまで待ってしまうことでチャンスを逃すことになる場合もあるほか、決断の早さばかりを意識してしまい、不確実性の高い案を採用してしまうことは多くの人がやってしまっていることです。
また、上司である立場の人が決断をした後、迷いを見せてしまうと部下(メンバー)の士気にも影響してしまうため注意が必要です。
更に、上司として重要な役割の1つとして「部下の判断力を育てる」ことが挙げられます。
上司が案件において全ての判断、決断を行ってしまうと部下が成長できないどころか、成長の妨げをしていると見えてしまいます。
育成のポイントとして「部下に判断させる場をあえて設ける」「判断理由を言語化させる」「決断を任せる範囲を少しずつ広げる」「結果よりもプロセスについてフィードバッグする」といった、部下の判断から決断をさせる経験を増やすことで、チーム全体の士気と意思決定力が高まります。
判断と決断の関係性を理解する
判断と決断、どちらかが曖昧だとプロジェクトが上手くいかない確率が大きく上がります。
だからといって、判断と決断に多くの時間をかけて厳選しているようでは他社に後れを取るだけでなく、チャンスを逃す可能性も出てきてしまいます。
必要となるのは、判断と決断の質とスピードです。
判断は状況を整理、選択しを作るためのプロセスとなり、決断は選択肢の中からより効果が大きいとされるものを選ぶこと。
つまり、判断とは「土台」であり、決断とは「家」であると考えられます。
土台(判断)がしっかりと選別されていなければ家(決断)はすぐに傾いてしまいます。
判断と決断の関係性は、どちらか一方だけでは成り立つことはなく、だからと言って時間をかけてしまうとチャンスを逃す可能性が高いプロセスなのです。
まとめ
この記事では「判断」と「決断」の違いを整理しながら、上司と部下のそれぞれの立場からは何を意識するべきかを紹介しました。
判断とは、情報を整理し、選択しを評価する行為であり、決断とは、選択しから1つを選び責任を持って実行に移す事。
そして部下は判断の質を高め、任された範囲で小さく決断することで今よりも成長できる機会を得られるように振る舞うこと。
上司は決断の質とスピードを高めると同時に、部下に判断と決断の機会を与えることでチーム全体の士気を底上げし、成果の向上につながるようにすることが大切です。


コメント